その日からはもうぼろぼろだった 俺が知っている人間は恐ろしいほどに減り クラスで知っているやつは初子、忠介、カナ坊だけだった それだけに恐ろしかった、もし俺の異常を察されるとここにはいれなくなってしまうだろう それだけは避けたかった、俺の残った時間は全て鞠音のために使おうと決めていたんだから だが、その約束もいつしたものかも思い出せなくなった 体育祭の日にしたものなのか、互いの気持ちを確かめ合った日にしたものなのか それ以上に恐ろしいのは、いつかこんなにも大切な鞠音のことすら 忘れてしまうのではないかということだ 俺はそれの予防策として覚えている限りのことをノートに書き写した 半ば日記のようになってしまっているが・・・・・ 忠介「靖臣」 俺はまだこの声を覚えている 靖臣「なんだ、忠介」 忠介「次の時間サボらないか」 次の時間、即ち四時間目になる 靖臣「どうしたんだ急に」 忠介「大切な話がある」 俺はいつになく真剣な忠介の声に押され、忠介と共に屋上に向かった 忠介「わるいね、他者を交えたくないからね」 靖臣「で話ってなんだ」 忠介「君の記憶について・・・といえばわかるかな」 靖臣「・・・・何となく予想してたが気付いてたのか」 忠介「ああ、もう少し親友を頼ってほしいものだ」 靖臣「頼る・・・か」 そういえばもう俺は誰も頼ろうとはしていなかった よく考えていれば記憶のあるうちに何かを頼ろうと思ってすらいなかった 忠介「君の記憶を戻すことは出来ないが、何かを残しておくことはできる」 靖臣「そうだな・・・・それじゃあ」 ・・・・・・ ・・・・ ・・・・・・・ 忠介「それだけでいいんだね」 靖臣「ああ、今の俺にはそれぐらいしか思い浮かばない」 忠介「わかった、頼まれたことは必ずやり遂げるよ」 靖臣「わるいな」 忠介「ふっ、親友が困っている時に手を貸さないわけないだろう」 そうだ・・・忠介はこういう奴だったんだ いつも何かたくらんでいて何かと無関係の人を巻き込むが 本当は誰よりも情に厚い、俺も何度かこいつに助けてもらっていた 忠介「あと・・・どれぐらいもちそうだ?」 靖臣「さあな・・・今日・・明日にはお前のことも忘れちまってるかもしれない」 忠介「そうか・・・・靖臣はその運命で良かったとおもっているのかい?」 靖臣「どういう意味だ?」 俺がそういうといつになく真剣な顔で言ってくる 忠介「君が呪いを受けた経緯も僕は知っている、本当は靖臣が受けるべきではなかった事もね」 靖臣「なるほど・・・・。    でもな、忠介、俺は後悔はしてないぜ、俺が犠牲になって一人の子供が助かったんだからな」 これは間違いなく俺の本心、今、またあの水晶の事件が起きたとしても 俺は間違いなく同じ行動をとるだろう 忠介「そうか・・そういうとは思っていたがな」 それから俺と忠介は俺の残った記憶の中での話をした その後はいつもの様に鞠音が来て一緒に昼食をとって そして放課後にはプールで泳ぐ しかし鞠音にも俺の異常はわかっていた それはそうだろう、俺はつい先日まで一緒に泳いでいた水泳部の連中の名前すら思い出せないのだ だが誰も俺に話し掛けようとしない。なぜなら 俺がプールから出るとすぐに 鞠音「はい、先輩、タオルです」 というように鞠音が助けてくれていたのだ 今ここにいられるのは鞠音のおかげに他ならない だからこそ俺は自分に嫌気がさしていた 俺のことをこんなにも大切に思ってくれている鞠音のことすら 俺は忘れ去ろうとしているのだから 鞠音「先輩、大丈夫ですか?」 放課後になり鞠音と一緒に帰る 俺は鞠音の問いに微かに首を振った そうだ、あいつに頼んだことを鞠音にも伝えておこう、鞠音に関連することなのだから・・・・ ん?あいつって誰だ?俺は何を頼んだんだ?何が鞠音に関連することなんだ? 鞠音「先輩・・・大丈夫ですよ、いつか治りますよ」 気休めにしか聞こえないが、俺には何物にも変えがたい物だった その後、俺は鞠音の家まで送り自分の家に帰った 台所に向かうとすずねえの文字で 『ちゃんとごはんたべるんだぞっっっ』 と書いている紙の近くに夕飯用のおかずが置いてあった 俺はそれをありがたく頂き、風呂に入るとすぐにハンモックに横になった 今俺を繋ぎとめているのは僅かな記憶のかけらだけ それが朝起きた時に失われていないことを祈りつつ 俺は眠りについた あと(あ)がきのようなもの 宣言通り非常に短くなってしまいました 残り三話全部つなげてもいいくらいの短さです それでも日付の差をつけるためあえて分割します その事をご了承ください では次回にお会いしましょう 感想お願いします メアド b-cless@mx15.freecom.ne.jp